いつもの一杯と、肌の調子
肌の調子が気になるとき、化粧水やクリームに加えて、毎日の食べ物や飲み物を見直すことはありませんか。
いつものコーヒーも、その一つかもしれません。目をさますはたらきのあるカフェインは、肌にも影響するのでしょうか。
カフェインは、夜の眠りを妨げることがあります。睡眠不足で肌の回復が遅れることもあるため、眠りへの影響が、肌にも及ぶ可能性があるのです。
まずは肌がうるおいを保つ仕組みを知り、眠り、そしてカフェインとの関係を順に見てみましょう。
肌のうるおいを守る、バリアのはたらき
肌の表面からは、水分が少しずつ失われています。水分の蒸発を抑え、外からの刺激を入りにくくするのが、肌の「バリア」のはたらきです。1
このバリアがうまくはたらかなくなると、水分が逃げやすくなり、肌の乾燥につながります。肌のうるおいは、水分を保つバリアのはたらきに支えられています。1
バリアの役割を簡略化した模式図。肌の構造や水分量を表した図ではありません。注釈1参照。
肌の表面から失われる水分の量は、バリアの状態を調べる目安になります。たとえば、一度バリアを弱めたあとに、この量がもとに戻るまでの経過を調べると、バリアの回復の速さがわかります。2
では、睡眠が足りないと、バリアの回復はどう変わるのでしょう。
眠りが足りないと、肌の回復にも変化が
睡眠不足のあとに、肌のバリア機能がどのくらい回復するかを調べた実験があります。
健康な女性11人が一晩眠らずに過ごした実験では、テープで肌の表面の一部を取り除いたあと、バリア機能の回復が遅くなりました。肌が水分を保つはたらきを取り戻すまでに、時間がかかったのです。2
一晩の睡眠不足とは別に、日ごろの眠りとの関係を調べた研究もあります。健康な女性60人を睡眠の質と長さで分け、同じように肌の表面を処置したあと、回復の様子を比べました。その結果、睡眠の質がよく、睡眠時間も長い人たちのほうが、バリア機能の回復が進んでいました。3
こうした研究から、睡眠不足は、肌のバリア機能の回復を遅らせる可能性があると考えられています。肌が水分を保つはたらきを取り戻すまでの時間にも、睡眠が影響するかもしれないのです。
ただし、実験でバリア機能の変化が見られたからといって、一晩眠れなければ必ず肌が荒れるわけではありません。23
では、カフェインをとると、夜の眠りはどう変わるのでしょう。
カフェインと肌をつなぐ、夜の眠り
起きている時間が長くなると、だんだん眠くなります。この眠気には、脳にある「アデノシン」という物質のはたらきが関わると考えられています。4
カフェインは、アデノシンのはたらきを妨げ、眠気を感じにくくします。その作用が夜まで続くと、寝つきが悪くなったり、眠る時間が短くなったりする場合があります。影響の強さは、飲む量や時刻によって変わり、個人差もあります。45
カフェインで十分に眠れなくなると、肌のバリア機能の回復も遅れるかもしれません。目をさますための一杯が、眠りを妨げることで、肌のうるおいを守るはたらきにも影響する可能性があるのです。
ただし、カフェインと睡眠の研究と、睡眠と肌の研究は別々に行われたものです。コーヒーを飲むと肌の回復が遅れる、と直接確かめられたわけではありません。6
カフェインを摂る
眠る時間が
短くなる場合がある
一晩の睡眠不足
肌のバリア機能の
回復の遅れを報告
ここから考えられる可能性カフェインで十分に眠れなくなると、肌のバリア機能の回復も遅れるかもしれません。
2つは別の研究です。コーヒー摂取による肌への影響を直接調べた結果ではありません。研究条件は注釈2・5・6参照。
カフェインは、眠りを通じて肌にも影響するかもしれません。
注釈・出典
NIH/NIAMS「Health Lesson: Learning About Skin」の皮膚の保護・体液保持の説明、および「Atopic Dermatitis」の保護層の変化と水分喪失の説明を参照。後者は疾患の資料ですが、ここではバリアの役割の説明に限って用いています。コーヒーが皮膚炎を起こすという根拠ではありません。 ↩1 ↩2
Altemusら(2001)「Stress-induced changes in skin barrier function in healthy women」(doi: 10.1046/j.1523-1747.2001.01373.x)。原著要旨を確認。睡眠不足の実験には女性11人が参加。テープストリッピング後のバリア機能の回復などを調べ、睡眠不足後に回復の低下が報告されています。水分喪失の指標は経皮水分蒸散量(TEWL)。この結果だけでは、日常の短い寝不足でどの程度の影響が出るかや、どんな肌症状が起きるかまではわかりません。 ↩1 ↩2 ↩3
Oyetakin-Whiteら(2015)「Does poor sleep quality affect skin ageing?」(doi: 10.1111/ced.12455)。原著要旨を確認。健康な白人女性60人を、眠りの質と睡眠時間で比較した研究です。睡眠の質の尺度PSQIが5以下・睡眠7〜9時間の群と、PSQIが5超・睡眠5時間以下の群を比較。テープストリッピング72時間後のバリア回復などを測定しました。睡眠時間などを無作為に割り当てた試験ではなく、睡眠時間と質それぞれの影響を切り分けたものでもありません。対象者も限られるため、誰にでも同じ結果が当てはまるとは限りません。 ↩1 ↩2
NIH/NHLBI「What Makes You Sleep?」および「Your Guide to Healthy Sleep」のアデノシンとカフェインの説明を参照。睡眠には体内時計なども関わり、アデノシン一つで説明されるわけではありません。 ↩1 ↩2
Drakeら(2013)「Caffeine effects on sleep taken 0, 3, or 6 hours before going to bed」(doi: 10.5664/jcsm.3170)。原著要旨を確認。400mgのカフェインを就寝0・3・6時間前に摂る条件とプラセボを比較し、睡眠への影響を調べた試験です。この量の結果を、日常の一杯や全員共通の時間の目安へ置き換えていません。 ↩1
睡眠を介した肌への影響は、上記の研究を合わせた解釈です。カフェインを減らすと肌が改善することや、特定の肌症状の原因を示すものではありません。乾燥や赤み、かゆみが続く場合は、コーヒーだけを原因と決めず、皮膚科で相談してください。 ↩1