夜にも、コーヒーを飲みたいときは?
夕食のあとや、夜にひと息つくときに、コーヒーを飲みたくなることはありませんか。けれど、夜に飲むと眠りに響かないか、気になるところです。
眠りとの関係を考えるうえで、飲む量とともに大切なのが、飲んでから寝るまでの時間です。体内のカフェインの量は、時間とともに少しずつ減っていくため、同じ量を飲んでも、寝るまでの時間が短いほど体に多く残ります。
夜のコーヒーを楽しみながら、カフェインを減らす方法の一つが、時間帯での飲み分けです。昼はふつうのコーヒーを飲み、夕方からはデカフェに替える。そうすると、何が変わり、何が変わらないのでしょうか。
同じ1杯でも、寝るまでの時間が短いほど多く残る
このシリーズの第3回で見たように、体の中のカフェインが半分に減るまでの時間は、健康な大人で平均約4時間。2〜8時間ほどの幅があります。1
たとえば、100mgのカフェインを14時に飲んだ場合と、18時に飲んだ場合を比べてみます。100mgは、小さめのカップ(150mL)のコーヒー1杯より少し多い量です。2
半減期を4時間とすると、100mgのカフェインを14時に飲んだ場合、22時には約25mgが体に残ります。18時に飲んだ場合は約50mg。同じ量を飲んでも、飲む時刻が4時間遅いと、22時の時点で体に残る量は2倍になります。3
同じゼロ起点・同じ縮尺。半減期を4時間で一定、吸収は瞬時と仮定した計算例です。実測値ではなく、眠りへの影響を予測するものでもありません(注釈3)。
欧州食品安全機関(EFSA)は、100mgでも、とくに寝る時間に近いと、一部の大人の睡眠に影響しうるとしています。4
厚生労働省の資料も、飲む時刻が遅いほど睡眠に悪影響を与えやすくなるとして、夕方以降はカフェインを含む食品を控えることをすすめています。カフェインの分解には個人差があり、敏感な人は、寝る5〜6時間前から控えたほうがよいともしています。5
試験では、量と、寝るまでの時間の両方が関わっていた
では、飲む量と時刻によって、眠りとの関わり方はどう違うのでしょう。量と時刻を決めてカフェインをとってもらった試験があります。
ある試験では、同じ12人が、400mgのカフェインを、寝る時刻の6時間前、3時間前、寝る直前にとる夜を、それぞれ過ごしました。小さめのカップのコーヒーなら4杯あまりの量です。どの時刻でも、睡眠計で測った睡眠時間は、カフェインを含まない錠剤をとった夜より短くなりました。6時間前にとった夜は、本人がつけた記録では、差がはっきりしませんでした。6
別の試験では、若い男性23人が、100mgと400mgを、寝る12時間前、8時間前、4時間前にとりました。400mgでは、12時間前と4時間前にとった夜に寝つくまでの時間が延び、4時間前では睡眠時間も短くなりました。一方、100mgでは、4時間前でもはっきりした差は出ませんでした。7
どの時刻でも、測った睡眠時間が短くなった
6時間前は、本人の記録では差がはっきりしなかった(注釈6)
400mgでは、12時間前と4時間前で寝つくまでの時間が延びた
100mgでは、4時間前でもはっきりした差は出なかった
400mgを4時間前にとった夜は、睡眠時間も短くなった(注釈7)
400mgは小さめのカップのコーヒー4杯あまり、100mgは1杯より少し多い量にあたります(注釈2)。
どちらも少ない人数で、コーヒーではなく、錠剤やカプセルでカフェインをとった試験です。結果をそのまま誰にでも当てはめることはできません。それでも、眠りとの関係には、とる量と、寝るまでの時間の両方が関わっていました。
夜の1杯をデカフェにすると、カフェインは多くても10分の1ほど
では、夕方からの1杯をデカフェに替えると、とるカフェインはどのくらい変わるのでしょう。
アメリカ食品医薬品局(FDA)によると、デカフェのコーヒー約240mLに入っているカフェインは、ふつう2〜15mg。100mLあたりに直すと約1〜6mgです。ふつうに淹れたコーヒーは100mLあたり約60mgなので、FDAの値では、多くてもその10分の1ほどです。82
同じゼロ起点・同じ縮尺。ふつうのコーヒーは日本の成分表の値、デカフェはFDAの約240mLあたり2〜15mgを100mLあたりに換算した幅で、国も製品も異なる値です(注釈2・8)。
昼はふつうのコーヒー、夕方からはデカフェと飲み分けると、昼の1杯はそのままに、夜にとるカフェインを大きく減らせることになります。
農林水産省も、カフェインを取り除いた製品は、子どもや妊娠中・授乳中の人、カフェインに敏感な人が、カフェインをより少なくするための選択肢の一つだとしています。2
デカフェでも、ゼロにはならない
ただし、デカフェで減るのは量で、カフェインがなくなるわけではありません。
1杯あたりは少しでも、何杯も飲めば、そのぶん合計は増えます。また、FDAは、カフェインへの敏感さや、体から抜ける速さには、大きな個人差があると説明しています。8
夜にデカフェを飲んだときの眠りを直接調べた研究は、今回確かめた範囲では、1970年代の小さな研究しか見つかりませんでした。今売られているデカフェや、さまざまな人にそのまま当てはめられる結果ではありません。9
そのため、「デカフェなら眠りに影響しない」とまでは言い切れません。
夜のデカフェは、カフェインを減らせる。
でも、ゼロではない。
注釈・出典
このシリーズの第3回の注釈3と同じ値で、EFSA「EFSA explains risk assessment: Caffeine」(2015年)が、健康な成人の半減期を平均約4時間、2〜8時間ほどの幅と説明しています。妊娠の有無、薬、肝臓の状態などによって変わり、全員に共通の予測値ではありません。 ↩
農林水産省「カフェインの過剰摂取について」(令和8年8月28日更新)。コーヒー浸出液は日本食品標準成分表2020(八訂)の値で、100mLあたり60mg(粉末10gを熱湯150mLで淹れた場合)。150mLで約90mg、400mgがその4杯あまり(約4.4杯)にあたるという換算は、同じ濃さを仮定した計算です(このシリーズの第2回と同じ条件)。「消費者に注意いただきたいこと」の項で、「子供、妊婦、授乳中の方、カフェインに敏感の方は、カフェイン摂取量をより少なくするため、カフェインを取り除いたdecaffeinated製品を利用するのも選択肢の一つです」としています。 ↩1 ↩2 ↩3
第3回と同じ条件による計算例です。残る量=最初の量×(1/2)の「経過時間÷半減期」乗。半減期を4時間で一定、吸収が瞬時に済むものと仮定し、ほかにカフェインをとらない場合を計算しました(14時に飲んだ分は8時間後で100×1/4、18時に飲んだ分は4時間後で100×1/2)。実測値ではなく、飲む時刻の推奨でも、残る量から眠りへの影響を予測したものでもありません。 ↩
EFSA「Caffeine」(2015年5月27日の科学的意見の要点)。「Single doses of 100mg (about 1.4mg/kg bw) of caffeine may affect sleep duration and patterns in some adults, particularly when consumed close to bedtime.」 ↩
厚生労働省 スマート・ライフ・プロジェクト「寝ても疲れが取れないなら要チェック!あなたの睡眠の質 大丈夫ですか?」(「健康づくりのための睡眠ガイド2023」にもとづく解説)。「摂取する時刻が遅いと、より睡眠に悪影響を与えやすくなるため、夕方以降はカフェインを含む食品を控えることがおすすめです」。睡眠ガイド2023の本体はPDFのため、このHTMLの解説で確認しました。厚生労働省 e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」(2025年6月1日更新)。「カフェインの代謝には個人差があり、敏感な人は、就寝の5~6時間前から控えた方よいでしょう」。 ↩
Drake C, Roehrs T, Shambroom J, Roth T. Caffeine effects on sleep taken 0, 3, or 6 hours before going to bed. Journal of Clinical Sleep Medicine. 2013;9(11):1195–1200. 健康な成人12人(19〜48歳、女性6人・男性6人)を対象にした二重盲検の試験(全文で確認)。同じ12人が、400mgのカフェインを錠剤で寝る6・3・0時間前にとる夜と、カフェインを含まない錠剤だけをとる夜の4つの条件を、無作為の順番で別の夜に受けました。睡眠は家庭で頭部に付ける機器と睡眠日誌で測りました。機器で測った睡眠時間はどの時刻でも短くなり、6時間前の条件では日誌の差は統計的にはっきりしなかった(p = 0.08)としています。著者らは、6時間前でも睡眠が1時間以上減ったと述べています。本文では、減った時間の長さは示していません。血中濃度を測っていないこと、人数が少ないこと、若年〜中年で日頃の摂取が中程度の人に限られることを、著者らは限界として挙げています。 ↩
Gardiner CL ほか. Dose and timing effects of caffeine on subsequent sleep: a randomized clinical crossover trial. Sleep. 2025;48(4):zsae230. 日頃の摂取が1日300mg未満の若い男性23人(平均25.3歳)が、100mgまたは400mgのカフェイン(ゼラチンカプセル)を寝る12・8・4時間前にとった試験(全文で確認)。400mgでは、12時間前と4時間前で寝つくまでの時間が延び、4時間前では睡眠時間が短くなりました(8時間前・12時間前の睡眠時間の差は統計的にはっきりしなかった)。8時間前は、寝つくまでの時間にも、偽薬(カフェインを含まないカプセル)との統計的な差がはっきりしませんでした。100mgでは、機器で測った睡眠にも本人の評価にも、カフェインを含まないカプセルとの統計的な差は見られなかったとしています。対象が健康な若い男性に限られること、各条件の測定が1晩ずつであることを、著者らは限界として挙げています。眠りの深さなど睡眠の構造への影響も調べていますが、本文では扱っていません。 ↩
FDA「Spilling the Beans: How Much Caffeine is Too Much?」(2024年8月28日更新)。「decaf coffee typically has 2 to 15 milligrams in an 8-fluid-ounce cup」。8液量オンスは約237mLで、本文では約240mLとしました。100mLあたり約1〜6mgは、この値を容量で割った計算です(このシリーズの第14回と同じ換算)。FDAのデカフェの値と注釈2のふつうのコーヒーの値は、測った国も製品も異なります。「there is wide variation in both how sensitive people are to the effects of caffeine and how fast they eliminate it from the body」。 ↩1 ↩2
Karacan I ほか. Dose-related sleep disturbances induced by coffee and caffeine. Clinical Pharmacology and Therapeutics. 1976. 若い男性18人を睡眠検査室で調べ、ふつうのコーヒー、デカフェ、カフェインなどを寝る30分前に飲んでもらった研究で、要旨では、デカフェは睡眠の測定値に変化をもたらさなかったとしています。確認できたのは要旨のみです。1970年代の少人数の研究で、当時のデカフェに含まれていたカフェインの量はわかりません。この結果をもとに、寝る前のデカフェをすすめたり、デカフェが眠りに影響しないと判断したりすることはできません。 ↩