コーヒーを飲んでも眠れる。それなら影響はない?
午後や夕方にコーヒーを飲んだ日でも、夜はいつもどおり眠れた。そう感じることはないでしょうか。寝つきは悪くなかったし、朝まで起きた覚えもない。それなら、眠りには響いていないように思えます。
けれど、「眠れた」と感じた夜にも、眠りの深さや、途中で目が覚めていた時間まではわかりません。カフェインの研究には、こうした変化が機器で記録されても、本人の「よく眠れたか」という評価には差が出なかった例があります。3
寝つけたことと、一晩の眠りに影響がなかったことは、同じなのでしょうか。自分で感じられる眠りと、眠っている間に起きていることを比べながら、考えてみましょう。
眠っている間のことは、どこまで自分でわかる?
朝起きたとき、なかなか寝つけなかったことや、夜中に目を覚ましたことを思い出すことはできます。ただ、途中の目覚めをすべて覚えているとは限りません。厚生労働省の解説も、睡眠の質は自分では判断しにくいとしています。1
そこで研究では、本人の記憶や感覚に加えて、機器による記録を使います。本人には、寝つくまでの時間や、夜中に起きていた時間、よく眠れたかどうかを、朝に書き留めてもらいます。一方、機器では睡眠中の脳波などから、眠っていた時間と目が覚めていた時間を調べます。23
眠りの深さも、脳波から確かめられます。眠りには浅い段階と深い段階があり、深い眠りは夜の前半に多く現れます。「ぐっすり眠れた」という感覚と、脳波で調べる深い眠りの時間は、同じものではありません。4
- 寝つくまでの時間
- 途中で目が覚めていた時間
- 眠った時間
- よく眠れたかどうか
- 眠っていた時間
- 目が覚めていた時間
- 眠りの深さ
本文で紹介する試験が、眠りを確かめるのに使った二つの方法を整理した図です(注釈2・3)。
この二つの方法で同じ夜を調べると、自分では気づきにくい変化も確かめられます。これから紹介する試験では、同じ人がカフェインをとる日と、とらない日を過ごし、本人にはどちらの日か知らせずに眠りを比べています。23
カフェインは、寝ついたあとの眠りにも影響する?
カフェインをとったあとの眠りを調べた24の研究をまとめた報告では、寝つくまでの時間が長くなるだけでなく、深い眠りが減り、眠ったあとに目が覚めている時間も長くなっていました。睡眠時間そのものも短くなっています。5
つまり、カフェインの影響は、眠りに入るまでのことだけではありません。いったん眠りについたあとも、どれくらい深く眠るか、途中でどれくらい起きているかに現れることがあるのです。厚生労働省も、とる量が多いほど深い睡眠が減り、途中で目が覚めるなどして、睡眠の質が下がると説明しています。1
ただし、研究をまとめた結果だけでは、ふだんの一杯でどれほど変わるかまではわかりません。次に、とる量と時刻を決めて調べた試験から、本人が感じた眠りと、実際の記録を見てみましょう。
眠りが浅くなっていても、気づかないことはある?
若い男性23人が、400mgのカフェインをカプセルでとった試験があります。400mgは、小さめのカップ(150mL)のコーヒーなら4杯あまりに相当する量です。杯数はコーヒーの濃さで変わりますが、一度に多めのカフェインをとる条件で調べたものです。36
寝る8時間前にとった夜は、カフェインをとらない夜に比べて、機器では深い眠りが減り、途中で目が覚めていた時間も延びていました。それでも、本人の眠りの質の評価や、夜中に起きていた時間の回答には、はっきりした差がありませんでした。3
何も感じていなかったわけではなく、本人が答えた睡眠時間は短くなっていました。気づいていた変化もある一方で、「よく眠れたか」という評価には現れない変化もあったのです。寝る4時間前にとった場合には、本人も眠りの質を低く評価しています。3
- 変化あり途中で目が覚めていた時間が延びた
- 変化あり深い眠りが減った
- 差なし睡眠時間
- 変化あり睡眠時間を短く答えた
- 差なし眠りの質
- 差なし夜中に起きていた時間
- 変化あり睡眠時間が短くなった
- 変化あり途中で目が覚めていた時間が延びた
- 変化あり深い眠りが減った
- 変化あり睡眠時間を短く答えた
- 変化あり眠りの質を低く評価した
- 差なし夜中に起きていた時間
若い男性23人が400mgをカプセルでとった試験の結果を、カフェインをとらない夜と比べた言葉で整理しました。「差なし」は、統計的にはっきりした差が出なかったことを表します。各条件の測定は1晩ずつで、数値のグラフにはしていません(注釈3)。
別の12人の試験でも、寝る6時間前に400mgを錠剤でとった夜は、機器では睡眠時間が短くなりましたが、本人の記録では統計的にはっきりした差が出ませんでした。ただし、人数が少なく、本人の記録の差を捉えきれなかった可能性も、著者らは挙げています。2
これらは「本人は眠りの変化に気づかない」と一括りにできる結果ではありません。眠りのどの面を比べるかによって、機器の記録と本人の実感が一致しない場合がある、ということです。
少量のカフェインでも、眠りに影響する?
先ほどの23人の試験では、100mgも調べています。これは、小さめのカップ(150mL)のコーヒー1杯より少し多い量に相当します。寝る4時間前にとった場合でも、機器の記録と本人の評価のどちらにも、カフェインをとらない夜とのはっきりした差は出ませんでした。36
ただし、対象は日ごろからカフェインをとる健康な若い男性で、各条件を調べたのは1晩ずつです。「100mgなら誰でも影響しない」とまでは言えません。3
ふだんから飲んでいるかどうかも、結果を読むときの条件になります。カフェインを多くとる習慣があり、眠りに問題のない若い男性20人の試験では、朝から午後に150mgを1日3回とり続け、最後の摂取から8時間後に眠っても、睡眠時間や深い眠り、本人が評価した眠りの質に、カフェインをとらない期間との違いは見られませんでした。著者らは、体が慣れる可能性を挙げています。7
一方、研究をまとめた報告には、本人が感じる眠りの質も下がることが多く、影響の受け方には大きな個人差があるとあります。誰もが気づかないわけでも、同じ量で同じように変わるわけでもないのです。8
「眠れた」という感覚を否定する必要はありません。ただ、それだけでカフェインの影響がなかったと決めることもできません。寝ついたあとの眠りにも、実感だけでは捉えにくい変化があることを知っておきたいですね。
すんなり眠れた夜にも、カフェインが眠りの深さに影響していることがあります。
注釈・出典
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厚生労働省 スマート・ライフ・プロジェクト「寝ても疲れが取れないなら要チェック!あなたの睡眠の質 大丈夫ですか?」。厚生労働省が令和6年2月に発表した「健康づくりのための睡眠ガイド2023」を受けた解説で、国立精神・神経医療研究センターの栗山健一氏への取材をもとにしています。ページに更新日の記載はありません。睡眠ガイド2023の本体はPDFのため、このHTMLの解説で確認しました。「睡眠時間はある程度自分で確認できても睡眠の質は自分では判断しにくいものですが、その目安となるのが、朝目覚めた時の「睡眠休養感」です」「中途覚醒は必ずしもすべて自覚できるとは限らず、現実的にはほとんどの人が中途覚醒しています」。カフェインについて「カフェインには覚醒作用があるため、1日の摂取量が多いほど深い睡眠が減少し、睡眠の途中で目覚めるなど睡眠の質が低下して、睡眠時間も短くなります」。 ↩1 ↩2
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Drake C, Roehrs T, Shambroom J, Roth T. Caffeine effects on sleep taken 0, 3, or 6 hours before going to bed. Journal of Clinical Sleep Medicine. 2013;9(11):1195–1200(全文で確認。表は画像のため、数値は本文の記述で確認)。健康な成人12人(19〜48歳、女性6人・男性6人、ふだんのカフェイン摂取は平均115mg/日)を対象にした二重盲検の試験です。同じ12人が、400mgのカフェインを錠剤で寝る6・3・0時間前にとる夜と、カフェインを含まない錠剤だけをとる夜を、別の夜に受けました。睡眠は、家庭で額に付ける機器(脳波を1か所で記録)と睡眠日誌で調べています。機器で測った睡眠時間はどの時刻でも短くなりました。著者らは「Even at 6 hours, caffeine reduced sleep by more than 1 hour」と述べています。機器で測った途中の目覚めの時間は、6時間前と3時間前で統計的に増えました(「reaching statistical significance for the 6 h (+8 min) and 3 h (+27.6 min) conditions」)。深い眠り(slow wave sleep)の時間はどの時刻でも減りましたが、統計的に差が確かめられたのは寝る直前と6時間前でした。この機器による睡眠段階の測定は検証されて間もないため、著者らは段階についての結果を予備的なものとしています。日誌では、睡眠時間は寝る直前と3時間前で短くなり、6時間前は差が統計的にははっきりしませんでした(41分の短縮、p = 0.08)。寝つくまでの時間も6時間前ははっきりせず(p = 0.06)、途中の目覚め・睡眠効率・眠りの質は、どの時刻でも「No significant effects were observed for WTDS, SE, or sleep quality」でした。著者らは「only the objective measure detected differences when caffeine was taken 6 hours prior to bedtime」とし、このずれを「lack of subjective awareness of caffeine-induced sleep disturbance」と表現しています。血中濃度を測っていないこと、人数が少なく日誌の差を検出する力が足りなかった可能性があること、若年〜中年で日頃の摂取が中程度の人に限られることを、著者らは限界として挙げています。研究は、睡眠測定機器の企業(Zeo Inc)からの研究費で行われ、著者には同社に所属する人が含まれます。 ↩1 ↩2 ↩3
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Gardiner CL ほか. Dose and timing effects of caffeine on subsequent sleep: a randomized clinical crossover trial. Sleep. 2025;48(4):zsae230(全文で確認)。日頃の摂取が1日300mg未満(平均112mg/日)の若い男性23人(平均25.3歳)が、100mgまたは400mgのカフェイン(ゼラチンカプセル)を寝る12・8・4時間前にとる夜と、カフェインを含まないカプセルだけをとる夜の7つの条件を、二重盲検で受けました。睡眠は、家庭で額に付ける機器と、起床後30分以内に記入する睡眠日誌で調べています。眠りの質は1(とても悪い)〜5(とても良い)の5段階です。400mgを機器で測った結果は、カフェインなしの夜と比べて、途中で目が覚めていた時間が8時間前で29.1分(p = .001)、4時間前で26.2分(p = .002)長くなりました。12時間前については、統計的な差は報告されていません。深い眠り(N3)は12時間前で20.6分(p = .001)、8時間前で15.3分(p = .016)、4時間前で29.7分(p < .001)短くなりました。機器で測った睡眠時間の短縮が統計的に確かめられたのは4時間前(50.6分、p < .001)だけです。本人の評価では、眠りの質は4時間前で0.8低く(p = .006)、「Reductions in perceived sleep quality were not observed with consumption 8 or 12 hours prior to bedtime」。本人が答えた睡眠時間は4時間前で1.3時間(p < .001)、8時間前で0.7時間(p = .034)短く、12時間前ははっきりしませんでした(p = .087)。本人が感じた途中の目覚めは「no significant effect on perceived WASO was observed」。著者らは「consumers are unable to perceive sleep disturbance when consumption occurs further away from bedtime」と述べています。100mgについては「No significant effect on objective or subjective sleep occurred with the 100 mg dose of caffeine compared with the placebo」。家庭での測定で環境や食事をそろえていないこと、各条件の測定が1晩ずつであること、対象が健康な若い男性に限られることを、著者らは限界として挙げています。利益相反はないとしています。 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8
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米国国立心肺血液研究所(NHLBI)「Sleep Phases and Stages」(2022年3月24日更新)。「Non-REM sleep has three stages, defined by measurements of brain activity taken in sleep studies」。3つ目の段階について「This stage is called deep sleep or slow-wave sleep」「You usually spend more time in this stage early in the night」。本文の「浅い眠り」「深い眠り」は、注釈5の報告の表記では「light sleep (N1)」「deep sleep (N3 and N4)」、注釈3の試験の表記ではN3です。 ↩
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Gardiner C, Weakley J, Burke LM, Roach GD, Sargent C, Maniar N, Townshend A, Halson SL. The effect of caffeine on subsequent sleep: A systematic review and meta-analysis. Sleep Medicine Reviews. 2023;69:101764(要旨のみ確認)。資料の種類は、系統的な文献の検索にもとづく総説とメタ解析です。「with 24 studies included in the analysis」「Caffeine consumption reduced total sleep time by 45 min」「sleep efficiency by 7%」「an increase in sleep onset latency of 9 min」「wake after sleep onset of 12 min」「Duration (+6.1 min) and proportion (+1.7%) of light sleep (N1) increased」「the duration (-11.4 min) and proportion (-1.4%) of deep sleep (N3 and N4) decreased」。含まれた研究の人数・カフェインの量・とった時刻は、要旨からは確認できませんでした。要旨は、寝る何時間前までにとるべきかという時間も示していますが、解析から導いた推定のため、本文では扱っていません。 ↩
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農林水産省「カフェインの過剰摂取について」(令和8年8月28日更新)。コーヒー浸出液は100mLあたり60mg(コーヒー粉末10g、熱湯150mLで淹れた場合)。150mLで約90mg、400mgがその4杯あまり(約4.4杯)、100mgが約1.1杯にあたるという換算は、同じ濃さを仮定した計算です。試験でとったのは錠剤やカプセルのカフェインで、コーヒーを飲んだ結果ではありません。 ↩1 ↩2
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Weibel J, Lin YS, Landolt HP, Kistler J, Rehm S, Rentsch KM, Slawik H, Borgwardt S, Cajochen C, Reichert CF. The impact of daily caffeine intake on nighttime sleep in young adult men. Scientific Reports. 2021;11:4668(全文で確認)。スイスのバーゼル大学の研究です。ふだんから1日300〜600mg(平均478mg)のカフェインをとり、眠りに問題のない18〜35歳の男性20人が、カフェイン(150mgを1日3回)、途中でカフェインなしに切り替える条件、カフェインなしの3つの条件を、それぞれ10日間、二重盲検で受けました。カフェインは起床の45分後・255分後・475分後にとり、検査室での睡眠の測定(睡眠ポリグラフ検査、8時間)は最後にとってから8時間後に始めています。眠りの質は、起床後の質問票で評価しました。「neither polysomnography-derived total sleep time, sleep latency, sleep architecture nor subjective sleep quality differed among placebo, caffeine, and withdrawal conditions」。一方、眠っている間の脳波の一部の成分(12〜16Hz)は、カフェインをとった条件で弱くなっていました。著者らの結論は「daily caffeine intake in the morning and afternoon hours does not strongly impair nighttime sleep structure nor subjective sleep quality in healthy good sleepers who regularly consume caffeine」です。対象が若い男性に限られること、人数が少ないことを、著者らは限界として挙げています。 ↩
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Clark I, Landolt HP. Coffee, caffeine, and sleep: A systematic review of epidemiological studies and randomized controlled trials. Sleep Medicine Reviews. 2017;31:70–78(要旨のみ確認)。資料の種類は総説です。「Caffeine typically prolonged sleep latency, reduced total sleep time and sleep efficiency, and worsened perceived sleep quality」「Slow-wave sleep and electroencephalographic (EEG) slow-wave activity were typically reduced, whereas stage-1, wakefulness, and arousals were increased」「The sleep of older adults may be more sensitive to caffeine compared to younger adults」「Pronounced individual differences are also present in young people」。要旨は、個人差に遺伝的な違いが関わるとする研究にも触れています。また「Most studies were conducted in male adults of Western countries, which limits the generalizability of the findings」としています。 ↩