食後の一杯と、食事の栄養
朝ごはんと一緒に飲むコーヒー。ランチのあとに、ひと息つきながら飲む一杯。食事の前後にコーヒーを楽しむ場面は、身近なものですよね。
実は、食事のときに飲むものは、食べ物の栄養が体に取り込まれる量にも関わります。コーヒーの場合、その影響が調べられている栄養素の一つが、鉄分です。
食事から摂った鉄分の吸収は、飲み物によってどう変わるのでしょう。コーヒーに含まれるカフェインが関係しているのでしょうか。まずは、鉄分が吸収される仕組みから見てみましょう。
食事から摂った鉄分が、吸収されるまで
鉄分は、血液の中で酸素を運ぶために欠かせない栄養素です。ただ、食事から摂った鉄分が、そのまますべて吸収されるわけではありません。腸で吸収された鉄分が、体の中で使われます。1
流れを簡略化した模式図です。吸収される割合を表したものではありません。
鉄分の吸収されやすさは、食品によっても違います。たとえば、豆や野菜などに含まれる鉄分は、一緒に食べるものや飲むものの影響を受けやすい性質があります。1
同じ食事に含まれるビタミンCは、こうした鉄分の吸収を助けます。逆に、吸収を妨げる成分もあるため、食べ物に含まれる鉄分の量だけでは、実際に吸収される量はわからないのです。1
コーヒーとの関係で注目されているのも、この吸収の段階です。食事と一緒に飲むと鉄分の吸収量が減ることが、実験で確かめられています。2では、コーヒーのどの成分が関わっているのでしょう。
鉄分と結びつく、もう一つの成分
ここで注目したいのが、コーヒーに含まれるポリフェノールです。カフェインとは別の成分で、鉄分の吸収への影響が調べられています。3
ポリフェノールは、植物に含まれる成分のグループで、コーヒーにはクロロゲン酸などが含まれます。こうした成分の一部が腸の中で鉄分と結びつくと、鉄分が吸収されにくくなります。3
分子の形や結合の比率を再現した図ではありません。影響の大きさは、成分や食事の条件で変わります。
つまり、コーヒーの成分が関わるのは、食事から摂った鉄分が体に吸収される前の段階です。すでに血液にある鉄分を、コーヒーが直接取り去るという話ではありません。
こうして見ると、コーヒーによる鉄分の吸収への影響は、カフェインだけでは説明できないことがわかります。では、吸収される鉄分が少なくなると、そのまま貧血につながるのでしょうか。
吸収が減ることと、貧血の違い
まず、実験で測られているのは、一回の食事から吸収される鉄分の量です。コーヒーの濃さや飲むタイミングによっても結果が変わるため、その数字が毎日のすべての食事に当てはまるわけではありません。2
一方、体の中には鉄分の蓄えがあります。一回の食事から吸収される量だけでなく、それまでに蓄えられた鉄分も、体の状態に関わっているのです。
食事などから補う鉄分が足りない状態が続くと、まずはこの蓄えが減っていきます。さらに不足が進み、酸素を運ぶための材料まで足りなくなると、鉄欠乏性貧血につながります。1
一回の吸収量が減ることと、貧血になることの間には、こうして鉄分が不足していく過程があります。そこには、ふだんの食事や鉄分の蓄えに加え、出血などで失われる量も関わっています。4
ここまでは、食事から鉄分を吸収する仕組みを見てきました。続いて、体内の鉄分が失われる場面を見てみましょう。
月経で失われる、体内の鉄分
その一つが、月経による出血です。月経があると、定期的に血液とともに鉄分が失われます。4
失われた分を十分に補えなければ、体の蓄えは少しずつ減っていきます。とくに出血が多い場合は、鉄分不足や鉄欠乏性貧血のリスクが高くなります。4
吸収される鉄分コーヒーはここに関わる
失われる鉄分月経による損失など
鉄分の吸収と出血による損失を考えるための模式図です。量や速度、すべての経路を示したものではありません。
同じようにコーヒーを飲んでいても、食事の内容や出血の量、もともとの蓄えは人それぞれです。月経があるかどうかだけでなく、吸収して補う量と、出血などで失われる量の両方が、その人の鉄分の状態に関わっているわけです。
デカフェなら、影響はなくなる?
最後に、コーヒーの成分の話へ戻りましょう。カフェインを減らしたデカフェなら、鉄分の吸収への影響もなくなるのでしょうか。
デカフェではカフェインを減らしていますが、ほかの成分まで一緒になくなるわけではありません。市販のデカフェを調べた研究でも、ポリフェノールの一種であるクロロゲン酸が含まれていることが確認されています。5
こうした成分が残っているため、「デカフェなら鉄分の吸収に影響しない」とは言い切れません。ただし、成分を調べただけでは、普通のコーヒーと同じ程度の影響があるかどうかまではわからないのです。5
いつもの食事に添える一杯のコーヒー。その成分と食べ物に含まれる鉄分が結びつくことが、吸収への影響につながっています。カフェインの量だけでは見えてこない、コーヒーと食事の関係です。
コーヒーのポリフェノールは、鉄分の吸収にも関わります。