同じ棚に並ぶ、2つの「目覚ましの一本」
コンビニの冷蔵ケースで、缶コーヒーとエナジードリンクが近くに並んでいることがあります。どちらも、眠気を覚ましたいときに選ばれやすい飲み物です。
ところが、手に取って缶の裏の表示を見比べると、書かれていることはずいぶん違います。エナジードリンクには「1本あたり○mg」とカフェインの量が書かれているのに、コーヒーには見当たらないこともあります。
同じように目を覚ます飲み物なのに、中身は何が違うのでしょう。成分と表示の両方から見てみます。
目を覚ます成分は、どちらもカフェイン
コーヒーのカフェインは、コーヒー豆にもともと含まれているものです。豆から湯で成分を引き出すときに、カフェインも一緒に溶け出します。
エナジードリンクでは、食品添加物としてカフェインを加えている製品があります。業界団体のガイドラインも、こうした「カフェインを添加した清涼飲料水」を対象にしています。1
入り方は違っても、体に入るのは同じカフェインです。欧州食品安全機関(EFSA)は、すべての食品からのカフェインを合わせた量で安全性を評価しています。エナジードリンクによく使われるほかの成分についても、ふつうに含まれる量であれば、カフェインの安全性の評価を変えるものではないとしています。2
つまり、目を覚ます役割を担う成分は共通です。そうなると、違いが出るのは「どれだけ入っているか」です。
量の違いは、「種類」より「製品」で大きい
コーヒーのカフェインは、粉から淹れたもので100mLあたり約60mgです。小さめのカップ1杯(150mL)なら、約90mgになります。3
エナジードリンクは、製品による差がとても大きい飲み物です。農林水産省が市販の12製品を調べたところ、100mLあたり28〜300mgと、10倍ほどの開きがありました。3
濃さで比べると、コーヒーより薄い製品もあれば、5倍ほど濃い製品もあるということです。ただし、濃い製品ほど量が多いとは限りません。1本あたりで見ると、同じ12製品は50〜170mgでした。100mLあたりの値が最も大きい製品でも、1本の量はこの範囲に収まっています。容量が小さいためです。3
農林水産省の資料の値を、同じ縮尺で並べた図。エナジードリンクは製品による幅を斜線の区間で示しています。コーヒーは日本食品標準成分表の値からの計算で、淹れ方やカップの大きさで変わります。
小さめのコーヒーに置き換えると、エナジードリンク1本は半杯分ほどから、2杯近くまでにあたります。「エナジードリンクだから多い」「コーヒーだから少ない」とは言い切れず、実際の量は製品ごとに確かめる必要があります。コーヒーも、淹れ方やカップの大きさで量が変わります。3
1本あたりの量が書いてあるのは、エナジードリンクのほう
製品ごとに確かめるなら、頼りになるのが表示です。ただ、カフェインの量は、どの飲み物にも書かれているわけではありません。
容器包装に入った加工食品には、栄養成分表示が義務づけられています。必ず書く項目は、熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、食塩相当量の5つです。カフェインはこの中に入っていません。4
一方、全国清涼飲料連合会のガイドラインでは、カフェインを加えた清涼飲料水のうち、100mLあたり21mg以上のものに、1本あたりのカフェイン量を表示するとしています。子どもや妊娠中・授乳中の人、カフェインに敏感な人に飲用を控えてもらう表示も含まれます。2019年から続く、業界の自主的な取り決めです。1
栄養成分表示
容器包装に入った加工食品に義務づけ
- 熱量
- たんぱく質
- 脂質
- 炭水化物
- 食塩相当量
カフェインは、必ず書く項目に入っていない
業界のガイドライン
カフェインを加えた清涼飲料水で、
100mLあたり21mg以上のもの
- 1本あたりのカフェイン量
- 適量の飲用を促す表示
- 飲用を控えてほしい人への表示
エナジードリンクに
「1本あたり○mg」が書かれる
コーヒーのカフェインは豆に含まれるもので、ガイドラインの対象外。
数字がなくても、カフェインは含まれる
本文の資料を整理した図。ガイドラインは業界団体による自主的な取り決めで、法律による表示義務ではありません。
エナジードリンクに「1本あたり○mg」と書かれているのは、このためです。コーヒーは豆にもともと含まれるカフェインなので、このガイドラインの対象外です。数字が書かれていなくても、カフェインは含まれています。
成分表は「何mLあたりか」と「並び順」を見る
表示にカフェインの数字があるときは、それが何mLあたりの値かを確認します。栄養成分表示は、100mLあたり、1本あたりなど、製品が選んだ単位で書かれています。5
100mLあたりの表示なら、容量を掛けると1本分になります。たとえば100mLあたり32mgで250mL入りなら、1本で80mgです。炭水化物など、ほかの項目も同じように1本分へ直すと、飲み切ったときの量がつかめます。
次に、原材料名の欄を見ます。原材料は、多く使ったものから順に並んでいます。添加物は「/」などで区切られ、その後ろにまとめて書かれます。6
カフェインを加えたエナジードリンクでは、カフェインは「/」の後ろに添加物として並びます。そこにビタミンなどの名前が続くこともあります。原材料の前のほうに砂糖などがあれば、甘みを加えた製品だとわかります。無糖のコーヒーなら、原材料は「コーヒー」だけのこともあります。
栄養成分表示100mLあたり
- 熱量
- ○kcal
- たんぱく質
- ○g
- 脂質
- ○g
- 炭水化物
- ○g
- 食塩相当量
- ○g
- カフェイン
- 32mg
この製品には1本あたり80mgのカフェインが含まれています。
-
何mLあたりの値かを見る
100mLあたり32mgで、250mL入り。
32mg × 2.5 = 1本で80mg -
「/」の後ろは添加物
加えたカフェインは、ここに並ぶ。
-
前のほうほど、多く使われている
先頭の砂糖類から、甘みを加えた製品だとわかる。
説明用に作成した表示例で、実在の製品の表示ではありません。○の欄は省略しています。カフェインの値は、農林水産省が調べた範囲(100mLあたり28〜300mg)から選んだ例です。
中身は同じカフェイン。違うのは、1本に入っている量と、その書かれ方です。
注釈・出典
全国清涼飲料連合会「カフェインを多く添加した清涼飲料水(いわゆるエナジードリンクを含む)の表示に関するガイドライン」。対象は「食品添加物としてカフェインを添加した清涼飲料水で、100mlあたりのカフェイン量が21mg以上のもの」。1本あたりのカフェイン量と適量の飲用を促す表示、小児・妊産中及び授乳中の女性・カフェインに敏感な人に飲用を控えてもらう表示、酒類と一緒に飲むことを促さないことを定めています。2019年4月1日以降の製造分から実施。業界団体の自主的なガイドラインで、法律による表示義務ではありません。 ↩1 ↩2
EFSA「Caffeine」。2015年5月の科学的意見(EFSA Journal、doi: 10.2903/j.efsa.2015.4102)の要点。健康な成人では、1回200mgまで、1日400mgまでのカフェインは安全上の懸念を生じないとしています。妊娠中の評価は「すべての由来のカフェイン」を合わせた量で示されています。エナジードリンクのほかの成分は、一般的に含まれる濃度であれば、1回200mgまでのカフェインの安全性に影響しないとしています。論文本体のページは取得できず、EFSAの解説ページで確認しました。 ↩
農林水産省「カフェインの過剰摂取について」(2026年8月28日更新)。エナジードリンク・眠気覚ましを目的とした清涼飲料水は、市販12製品の成分表示等(2026年7月23日、農林水産省調べ)。コーヒー浸出液は日本食品標準成分表2020(八訂)の値で、粉末10gを熱湯150mLで淹れた場合。インスタントコーヒーは粉末2gで1杯約80mg。150mLを約90mgとした換算は、このシリーズの第2回と同じ条件です。コーヒー1杯との比較(約0.6〜1.9杯分)は、この条件で計算した目安です。 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4
消費者庁「栄養成分表示について」(2025年9月30日更新)。義務表示の5項目のほか、推奨・任意で表示できる項目にもカフェインは含まれていません。 ↩
東京都保健医療局「栄養成分表示(表示方法)」。表示の単位は100g・100mL、1食分、1包装その他の1単位のいずれか。1食分とする場合は、その量を併記します。 ↩
東京都保健医療局「加工食品(原材料名)」。原材料は重量の割合の高いものから順に表示し、添加物は「/」で区切るか、別の欄を設けるなどして原材料と明確に区分して表示します。 ↩