デカフェなら、カフェインはゼロ?
夕方以降のコーヒーや、カフェインを控えたい時期の一杯に、デカフェを選ぶ。そんな場面があるかもしれません。
そのとき、カップの中のカフェインはゼロだと思っていませんか。
答えは「少しは残っている」です。デカフェは、元のカフェインをどれだけ取り除いたかで決まる飲み物で、何mg入っているかで決まるわけではないからです。
では、カップの中には実際に何mg入っているのでしょう。表示のルールの中身と、実際に測った結果から見ていきます。
表示のルールが決めているのは、取り除く割合
日本のコーヒーの表示のルールでは、カフェインを90%以上取り除いたコーヒーが「カフェインレスコーヒー」とされ、デカフェも同じ意味で使われています。1
このルールが決めているのは、元のカフェインをどれだけ取り除いたかという割合です。取り除いた後に何mgまでなら入っていてよいか、という決め方ではありません。
割合で決まっているので、「デカフェ」と書かれていても、何mg入っているかまではわかりません。取り除く前のカフェインが多ければ、同じように9割を取り除いても、入っている量は多くなります。そこで、実際にmgで測った値を見てみます。
実際に測ると、1杯に数mgから十数mg
アメリカ食品医薬品局(FDA)は、デカフェのコーヒーにも少しはカフェインが含まれるとし、8液量オンス(約240mL)の1杯で、ふつう2〜15mgとしています。2
カップの大きさをそろえるため、100mLあたりに直すと、約1〜6mgになります。日本の資料では、ふつうに淹れたコーヒーは100mLあたり約60mg。FDAの値では、ふつうのコーヒーの10分の1ほどです。23
同じゼロ起点・同じ縮尺。デカフェは製品による幅を網掛けの区間で示しています。ふつうのコーヒーは日本の成分表の値、デカフェはFDAの値からの計算で、測った製品も国も異なります(注釈2・3)。
ふつうのコーヒーと比べれば、ずっと少ない量です。ただ、ゼロではありません。
同じデカフェでも、量には幅がある
「2〜15mg」という幅も、見過ごせない点です。
コーヒー店で売られているデカフェを集めて、カフェインを測った研究があります。異なる店の10品では、約470mLの1杯あたり、0mgと報告されたものから13.9mgまで差がありました。4
同じ店舗から集めたデカフェのエスプレッソ6品では、1ショットあたり3.0〜15.8mgと、5倍ほどの開きがありました。同じ店の同じメニューでも、1杯ごとに量が違っていたことになります。4
注釈4の研究の最小値から最大値までを区間で示した図。1杯の量が行ごとに異なります。個々の測定値の分布は示していません。「0mg」は報告された値で、検出できる下限を下回った意味かどうかは確かめられていません。
限られた店の結果で、日本で売られているデカフェにそのまま当てはまるとは限りません。ただ、「デカフェ」という名前だけでは、1杯に何mg入っているかまでは決まらないことがわかります。
杯数を重ねると、少しずつ積み上がる
1杯に入っている量は少なくても、何杯も飲めば、そのぶん合計は増えます。
たとえば、FDAの幅の上のほうの15mgが入った1杯(約240mL)を、1日に5杯飲んだとすると、計算上は合計75mg。小さめのカップ1杯(150mL)のふつうのコーヒーの約90mgに近い量になります。23
仮の値を使った計算例で、測定値ではありません。飲んでよい量や控えるべき量の目安を示すものでもありません(注釈2・3)。
実際には、1杯ごとの量も飲む杯数も人それぞれです。デカフェに切り替えても、杯数が増えれば、ふつうのコーヒー1杯に近い量をとることもありうる、ということです。
気にかけたいのは、カフェインを控えている人
では、この「少し」を気にかけたほうがよいのは、どんな人でしょう。
FDAは、カフェインへの敏感さや体から抜ける速さには大きな個人差があり、病気や薬によって、カフェインの影響を受けやすくなることもあると説明しています。そのうえで、気になる病気や薬がある人、妊娠中・妊娠を考えている人・授乳中の人には、カフェインを控える必要があるかどうか、医療者に相談するようすすめています。2
先ほどの測定の研究も、カフェインの影響を受けやすい人には、デカフェとされるコーヒーにもカフェインが含まれうることを伝えるべきだ、と結論で述べています。4
医師などから、カフェインを控えるよう言われている人にとっては、デカフェの「少し」も、その日にとった量の一部として数えられるものです。
デカフェは、1杯なら少しだけ。
でも、飲み過ぎには注意。
注釈・出典
味の素AGF「カフェインレスとは?デカフェ・ノンカフェインとの違い」(2025年9月30日更新)、ネスレ日本「カフェインレスとは?デカフェとの違い」(2024年11月28日更新)。全日本コーヒー公正取引協議会「レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーの表示に関する公正競争規約」による定義として、カフェインを90%以上除去したコーヒーをカフェインレスコーヒーとし、デカフェも同じ基準としています。規約本文はPDFのため取得できず、規約を引用しているこの2社の解説で確認しました(このシリーズの第11回と同じ確認経路)。90%を取り除いた場合に1杯に含まれる量の計算例は、第11回の本文を参照してください。 ↩
FDA「Spilling the Beans: How Much Caffeine is Too Much?」(2024年8月28日更新)。「decaf coffee typically has 2 to 15 milligrams in an 8-fluid-ounce cup」。8液量オンスは約237mLで、本文では約240mLとしました。100mLあたり約1〜6mgは、この値を容量で割った計算です。敏感さと排出の速さの個人差、病気や薬による影響、妊娠中・妊娠を考えている人・授乳中の人への医療者への相談のすすめも同じページの記述です。本文の5杯の合計は、この上限の値を仮に使った計算例で、測定値でも、飲んでよい量や控えるべき量の目安でもありません。 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4
農林水産省「カフェインの過剰摂取について」。コーヒー浸出液は日本食品標準成分表2020(八訂)の値で、100mLあたり60mg(粉末10gを熱湯150mLで淹れた場合)。150mLで約90mgとした換算は、このシリーズの第2回・第11回と同じ条件です。FDAのデカフェの値とは、測った製品も国も異なります。 ↩1 ↩2
McCusker RR, Fuehrlein B, Goldberger BA, Gold MS, Cone EJ. Caffeine Content of Decaffeinated Coffee. Journal of Analytical Toxicology. 2006;30(8):611–613. 異なるコーヒー店のデカフェ10品は16液量オンス(約470mL)あたり0〜13.9mg、同じ店舗(スターバックス)のデカフェのエスプレッソ6品は1ショットあたり3.0〜15.8mg、同じ店舗のドリップのデカフェ6品は16液量オンスあたり12.0〜13.4mgでした。結論で、カフェインの影響を受けやすい患者には、デカフェとされるコーヒーにもカフェインが含まれうると伝えるべきだとしています。今回確認できたのは要旨のみで、「0mg」が検出できる下限を下回ったという意味かどうか、エスプレッソ1ショットの容量、試料を集めた地域は確かめられていません。製法ごとの残存量の違いは、この研究も含めて、今回確認した資料からはわからなかったため扱っていません。 ↩1 ↩2 ↩3