生理前に、いつもより食べたくなるのは?
生理(月経)が近づくと、いつもより食べたくなる。甘いものに手が伸びやすくなる。そんな変化を感じることはありませんか。
研究でも、排卵のあとには、その前より食べる量が多くなる傾向が報告されています。また、生理が近い時期には、甘いものなどを食べたい気持ちが強くなるという報告もあります。12
食べる量はどのくらい変わるのか、なぜ食べたくなるのか。食欲と生理の周期の関係を見ていきます。
食べる量の差は、平均で1日約170kcal
排卵のあと、次の生理が始まるまでの時期を「黄体期」といいます。生理前は、この黄体期の後半にあたります。研究では、黄体期と、生理が始まってから排卵までの「卵胞期」で、食べる量を比べています。1
15件の研究データ(合わせて330人)をまとめた2025年の解析では、黄体期の1日の摂取エネルギーは、卵胞期より平均で約170kcal多くなっていました。ごはんに換算すると、約110gに相当するエネルギーです。13
ただし、これは研究データをまとめた平均で、誰もが毎日この分だけ多く食べるという意味ではありません。食べる量の変化には、人による違いだけでなく、同じ人でも周期による違いがあると考えられています。14
- 黄体期は卵胞期より
- 1日約170kcal多い
- 約110g分のエネルギー
注釈1・3をもとに作成。エネルギーの大きさを示す目安で、追加で食べる量の推奨ではありません。
生理が近づくと、甘いものなどが欲しくなることも
食べる量だけでなく、「何を食べたいか」にも変化が見られます。
アメリカの健康な女性259人を調べた研究では、生理が近い黄体期の後半に、食欲や、チョコレート・甘いもの・塩気のあるものを食べたい気持ちが、ほかの時期より強くなっていました。2
ここで調べたのは、食べたい気持ちの強さです。実際に食べた量とは調べた時期が異なるため、その気持ちが食事の量や内容にどうつながったかまでは、この研究ではわかりません。2
食欲の変化には、2つの女性ホルモンが関わると考えられている
こうした食欲の変化に関わると考えられているのが、卵巣から出る2つの女性ホルモン、エストロゲンとプロゲステロン(黄体ホルモン)です。
エストロゲンは排卵の前に、プロゲステロンは排卵のあとに、分泌量が最も多くなります。エストロゲンは食欲を抑え、プロゲステロンは食欲を高める方向にはたらくと考えられています。54
食べる量が排卵のころに少なくなり、黄体期に多くなる傾向も、こうしたホルモンの変化と結びつけて説明されています。14
ただし、ホルモンのはたらきを示す根拠には、動物での実験や、ホルモンを薬として投与した場合の結果も含まれます。人の生理の周期の中で、ホルモンが食欲にどう作用するかは、まだ十分にはわかっていません。14
- 分泌量のピークは排卵の前
- 食欲を抑える方向にはたらくと考えられている
- 分泌量のピークは排卵のあと
- 食欲を高める方向にはたらくと考えられている
注釈4・5をもとに作成。根拠には動物実験や薬として投与した場合の結果を含み、人の周期の中での作用は、まだ十分にはわかっていません。
食べる量が増えるのは、使うエネルギーが増えるから?
黄体期には、プロゲステロンの分泌に合わせて、基礎体温が0.3〜0.5℃ほど上がります。体温が高くなるこの時期には、使うエネルギーも増えているのでしょうか。6
安静にしているときに使うエネルギー(安静時代謝)を調べた26件の研究をまとめた2020年の解析では、黄体期のほうがわずかに多くなっていました。ただ、2000年以降の研究に限ると、はっきりした差は見られませんでした。7
食べる量が増えるのは、使うエネルギーが増えるからなのか。この解析だけでは、そこまでは言えません。先ほどの約170kcalも、実際に食べた量の差を示すもので、体に必要なエネルギーがその分増えるという数字ではありません。17
生理前の「いつもより食べたい」。その感覚も、体の周期とつながっています。
注釈・出典
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Tucker JAL, McCarthy SF, Bornath DPD, Khoja JS, Hazell TJ. The Effect of the Menstrual Cycle on Energy Intake: A Systematic Review and Meta-analysis. Nutrition Reviews. 2025;83(3):e866–e876(全文で確認)。15件のデータ(330人、平均26歳)をまとめたメタ解析で、黄体期(おおむね周期の16〜28日目)と卵胞期の1日の摂取エネルギーを比べ、標準化平均差0.69(P = 0.039)、単純な平均差は約168kcal/日としています。研究間のばらつきは大きく(I² = 83%)、差が出た8件のうち7件は黄体期のほうが多く(平均約275kcal/日)、1件は卵胞期のほうが多い(約260kcal/日)、差がはっきりしなかった7件のうち6件は黄体期のほうが多い向き(平均約99kcal/日)でした(「6 reported effect sizes that favored an increase in energy intake in the LP compared with the FP」)。限界として、自宅での食事記録の過大・過小申告、平日と週末の違い、時期の決め方の不ぞろい、公表されていないデータの可能性を挙げています。黄体期に多く食べることについては「which may be attributed to the presence of elevated ovarian hormones during the LP」(黄体期に卵巣のホルモンが多いことによるのかもしれない)としています。ホルモンの作用についての説明には、ラット・マウスの研究が使われています。また、黄体期に多く食べることを、妊娠の可能性に備えてエネルギーの不足を避けるためではないかとする説明は、著者らの推測として書かれています。 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7
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Gorczyca AM ほか. Changes in macronutrient, micronutrient, and food group intakes throughout the menstrual cycle in healthy, premenopausal women. European Journal of Nutrition. 2016;55(3):1181–1188(BioCycle 研究、全文で確認)。アメリカ・ニューヨーク州西部で募集した18〜44歳の健康な女性259人を最大2周期追い、生理中・卵胞期の中ほど・排卵予定日・黄体期の中ほどの4回、24時間の食事を聞き取りました。1日の摂取エネルギーの平均は、黄体期の中ほど(1,662kcal)のほうが卵胞期の中ほど(1,591kcal)より多かったものの、統計的にはっきりした差ではありませんでした(P = 0.20)。たんぱく質は黄体期の中ほどで最も多く(P = 0.03)、脂質・炭水化物には時期による差がありませんでした。欲しくなる感覚は、前の1週間の症状を「なし・軽い・中くらい・重い」で答える質問票で調べ、黄体期の後半に、食欲、チョコレート・甘いもの・塩気のあるものを欲しくなる感覚などが、生理中・卵胞期・排卵のころより強くなっていました(P < 0.001)。著者らは、欲しくなる感覚を黄体期の後半、食事を黄体期の中ほどで調べたため両者の関係をとらえきれていない可能性があること、黄体期の後半に食事を調べていれば摂取エネルギーの増加が見られたかもしれないことを、限界として挙げています。 ↩1 ↩2 ↩3
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文部科学省「食品成分データベース」(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年)。こめ[水稲めし]精白米・うるち米は100gあたり156kcal。約170kcalとの比較は、大きさの目安として置き換えたものです。 本文と図の約110gは、170 ÷ 156 × 100 ≒ 109gを丸めた換算値です。追加で食べる量の推奨ではありません。 ↩1
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Rogan MM, Black KE. Dietary energy intake across the menstrual cycle: a narrative review. Nutrition Reviews. 2023;81(7):869–886(全文で確認)。「energy intake appears to be lower in the follicular phase compared with the luteal phase, with a particular decrease in the days leading up to and including ovulation. The magnitude of these fluctuations is not yet clearly quantifiable and most likely varies, both between individuals, and from cycle to cycle.」。ホルモンについては、エストロゲンが食欲を抑え、プロゲステロンが高めるはたらきは「at least when provided in pharmacological ranges」(少なくとも薬として使う量では)とし、エストロゲンと食べる量の関係は1920年代からラットで調べられてきたと説明しています。 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4
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厚生労働省 スマート・ライフ・プロジェクト「女性ホルモンとうまく付き合っていくには?」(大須賀穣氏の講演の解説)。「排卵前にはエストロゲンの分泌量がピークに、排卵後にはプロゲステロンがピークに達します」「プロゲステロンが増加すると、むくみや食欲増加、眠気、イライラなどが起こりやすくなります」。 ↩1
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厚生労働省研究班監修 ヘルスケアラボ「基礎体温」(2026年4月15日更新)。「女性の体は、排卵したあとに、プロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌に合わせて、わずかに(0.3~0.5℃)体温が上がります」「高温期は12~14日続きます」。このページでは「黄体期」ではなく「高温期」の語を使っています。 ↩1
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Benton MJ, Hutchins AM, Dawes JJ. Effect of menstrual cycle on resting metabolism: A systematic review and meta-analysis. PLoS One. 2020;15(7):e0236025(全文で確認)。26件の研究(318人)のメタ解析で、黄体期の安静時代謝が高い方向に小さな効果(効果量0.33、95%信頼区間0.17〜0.49)が見られた一方、2000年以降の研究に限ると効果は小さく、統計的にはっきりしなかった(効果量0.23、95%信頼区間−0.00〜0.47、P = 0.055)としています。多くの研究は人数が少なく、周期の時期と代謝の測り方に偏りのおそれがあるとしています。kcal での差は示していません。 ↩1 ↩2