生理のころ、いつもの一杯が気になるとき
生理(月経)の前や生理中に不調があると、いつものコーヒーや紅茶も関係しているのか、気になることがあるかもしれません。
カフェインと生理の関係は、生理前の不調である月経前症候群(PMS)と、生理中の痛みである生理痛について調べられてきました。飲む量と症状を比べた調査から始まり、症状が出る前の飲み方に目を向けた研究もあります。
その過程で見えてきたのは、カフェインの量だけでなく、ほかの生活習慣や、不調があるときの飲み方も関係している可能性です。なぜカフェインが注目され、調べ方を変えると何が見えてきたのか。研究をたどってみましょう。
多く飲む人にPMSが多かった調査がある
PMSは、日本産科婦人科学会によると、生理前の3〜10日間くらいに現れ、生理が始まると軽くなったり消えたりする、こころとからだの不調です。1
1990年、オレゴン州の女子大学生841人を調べた研究が発表されました。この調査では、カフェインを含む飲み物を多く飲む人ほど、PMSに当てはまる人の割合が高くなっていました。2こうした結果が、カフェインとPMSの関係に目を向ける根拠の一つになってきました。5
その後、サウジアラビアの1,831人を調べた2022年の研究でも、アラビアコーヒーを多く飲むことと、生理前の不安や気分の変化などの症状に関連が見られました。3
一方、PMSのある女性102人とない女性102人を比べた1993年の研究では、生理の前後に聞き取ったカフェインの量に、はっきりした差はありませんでした。4
関連が見られた2つの調査は、飲む量と症状を同じ時点で尋ねています。23そこで次に知りたくなるのが、症状が出る前の飲み方にも、同じ傾向があるのかということです。
症状が出る前から追うと、見え方が変わった
アメリカの看護師を追跡する「看護師健康調査II」では、PMSと診断される前から、数年ごとの質問票で食事やカフェインの量を調べていました。
そのデータを使った2016年の研究は、1991年にPMSがなかった人を対象としています。その後の14年間に新たにPMSと診断された1,234人と、PMSのない2,426人を比べました。5
年齢の違いだけを考慮すると、カフェインを多くとる人ほどPMSと診断される傾向がありました。ところが、喫煙などほかの生活習慣の違いも考慮すると、はっきりした関連は見られなくなりました。飲む量だけに注目したときとは、結果の見え方が変わったのです。5
最も多くとるグループ(中央値543mg/日)と、最も少ないグループ(同18mg/日)の間にも、はっきりした差はありませんでした。543mgは150mLのコーヒー約6杯分に相当する計算で、安全な量を示す数字ではありません。56
著者らは、過去の研究では、ほかの要因を十分に分けられていなかった可能性を挙げています。さらに、症状のある人がだるさを補おうと飲む量を増やしたり、症状を和らげようと減らしたりした可能性も指摘しました。5飲む量が不調に関わるという見方に加えて、不調によって飲み方が変わるという見方も出てきます。
1990年オレゴン州の女子大学生841人
関連あり多く飲む人ほど、PMSに当てはまる人の割合が高い(注釈2)
2022年サウジアラビアの1,831人
関連ありアラビアコーヒーを多く飲む人で、生理前の不安や気分の変化などの症状と関連(注釈3)
1993年PMSのある人102人、ない人102人
差は不明確カフェインの量に、はっきりした差は見られなかった(注釈4)
2016年アメリカの看護師(1,234人と2,426人)
関連は不明確年齢だけをそろえると関連が見られたが、ほかの要因もそろえるとはっきりしなかった(注釈5)
人数も調べ方も研究ごとに違うため、数値は並べず、関連が報告されたかどうかだけを示しました。どれも暮らしの中で飲む量を調べた研究で、量を決めて飲んでもらった試験ではありません。
痛みが強いから、コーヒーを減らすことも?
この「不調によって飲み方が変わる」という可能性は、生理痛の研究でも挙げられています。
北京の1,247人を調べた研究では、コーヒーを飲まない人より、飲む回数の多い人で中くらい以上の痛みとの関連が見られました。同じ調査では、生理中にコーヒーを減らした人にも、量を変えなかった人より中くらい以上の痛みとの関連がありました。8
著者らが挙げたのは、痛みが強いために、本人がコーヒーを減らした可能性です。8「減らした人に痛みが多い」という結果も、減らす前の状態や行動の理由まで考えると、読み方が変わります。この調査は、飲む量を変えて痛みの変化を確かめた試験ではありません。
生理痛とカフェインの関連を示した報告は、ほかにもあります。女子大学生の研究2件、合わせて約700人をまとめた2024年の解析では、多くとる人で生理痛のある割合が高くなっていました。ただし、研究数が少なく、著者らも慎重な解釈を求めています。7
一方、中国の女子大学生1,809人の研究では、コーヒーと生理痛の有無にはっきりした関連はなく、中くらい以上の痛みがある人の中では、飲む人のほうが重い痛みの割合が低い結果でした。9日本の女性321人の調査でも、痛みが重い人と軽い人でコーヒーの量に明確な差はありませんでした。10
2024年の解析女子大学生の研究2件(約700人)
関連ありカフェインを多くとる人で、生理痛のある割合が高い(注釈7)
2021年北京の1,247人
関連あり飲む回数の多い人で、中くらい以上の痛みの割合が高い。生理中に減らした人でも高い(注釈8)
中国の女子大学生1,809人
有無と強さで異なる生理痛の有無には明確な関連なし。痛みが中くらい以上の人の中では、飲む人で、重い痛みの割合が低い(注釈9)
日本の20〜39歳の女性321人
差は不明確生理痛が重い人と軽い人で、コーヒーを飲む量にはっきりした差は見られなかった(注釈10)
人数も、生理痛やコーヒーの量の尋ね方も研究ごとに違うため、数値は並べず、結果の向きだけを示しました。中国の女子大学生の研究で重い痛みの割合が低かったのは、痛みが中くらい以上の人の中での比較です。飲む量を変えた効果を確かめた試験ではありません。
痛みの有無を比べるか、強さを比べるかでも、調べる内容は変わります。血管が縮んで子宮への血の流れが減るという説明もありますが、2024年の解析の著者らが挙げた仮説です。7飲料との関連を調べた結果と、カフェインが体にはたらく仕組みは、区別して読む必要があります。
「控える」という助言は、どこから来たのか
アメリカ保健福祉省の女性の健康局(OWH)は、生理前の2週間にカフェインや塩分・糖分を含む飲食物を避けると、PMSの多くの症状が軽くなるかもしれないとしています。11厚生労働省研究班監修のヘルスケアラボも、試みられてきた治療の一つにカフェインの制限を挙げています。12
2016年の看護師の研究の著者らによると、こうしたカフェインを控える勧めを主に支えてきたのは、飲む量とPMSの関連を示したロシニョールらの一連の調査でした。5この記事の02で紹介した1990年の研究も、その一つです。
ただし、公的な解説の記載も一様ではなく、日本産科婦人科学会とイギリスの国民保健サービス(NHS)のPMS解説には、カフェインの記載はありません。113
看護師の研究が調べたのは新たなPMSの診断で、すでに症状のある人が減らしたときの変化ではありません。著者らも、減らす効果を確かめるには試験が必要だとしています。5今回確認した範囲では、カフェインだけを減らしてPMSや生理痛の変化を確かめた試験は見つかりませんでした。関連を調べた研究と、減らす効果を確かめる研究は、別の問いに答えるものです。
- 飲む量と、PMSに当てはまる人の割合多く飲む人で割合が高かった調査(注釈2)
- 診断前の飲む量と、その後のPMSほかの生活習慣も考慮すると、明確な関連は見られなかった(注釈5)
- 生理中に飲む量を変えたかと、痛みの強さ減らした人にも、中くらい以上の痛みとの関連(注釈8)
- 不調があることで、飲み方が変わることも症状のある人が、だるさを補おうと増やす/和らげようと減らす(注釈5)
- 痛みが強いために、コーヒーを減らす減らした人に痛みが多かった結果の、考えられる説明(注釈8)
左は調査で比べた内容と結果、右はそれを説明するために著者らが挙げた可能性です。右の行動の理由や因果関係が、これらの調査で確定したわけではありません。
生理とカフェインの関係には、不調による飲み方の変化も関わるのかもしれません。
注釈・出典
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日本産科婦人科学会「月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)」(2025年1月30日更新)。「月経前症候群(premenstrual syndrome:PMS)は、月経の前に現れるこころとからだの不調です。さまざまな症状が月経前に3~10日間くらい続きますが、月経が始まると自然に軽快・消失します」。ふだんの生活については、複合炭水化物・カルシウム・亜鉛・マグネシウム・ビタミンB6をとること、精製された糖・アルコール・喫煙を控えることを挙げていますが、カフェイン・コーヒーについての記載はありません(2026年10月1日確認)。 ↩1 ↩2
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Rossignol AM, Bonnlander H. Caffeine-containing beverages, total fluid consumption, and premenstrual syndrome. American Journal of Public Health. 1990;80(9):1106–1110。確認できたのは要旨のみです(Europe PMC 経由)。オレゴン州の女子大学生841人に郵送した質問票の調査で、PMSのオッズ比は、カフェインを含む飲み物を1日1杯飲む人で1.3、8〜10杯飲む人で7.0と、飲む量に応じて高くなっていました。杯の大きさは要旨に書かれていないため、本文では杯数を示していません。注釈5の論文は、ロシニョールらの一連の研究を、すでにあるPMS(prevalent PMS)を調べた研究とし、横断研究として論じています。同じ著者は1985年にも、大学2年生295人の質問票の調査で、カフェインを含む飲み物とPMSの有無・重さに強い関連があったと報告しています(Rossignol AM. Am J Public Health. 1985;75(11):1335–1337、要旨のみ)。 ↩1 ↩2
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AlQuaiz A ほか. Dietary, Psychological and Lifestyle Factors Associated with Premenstrual Symptoms. International Journal of Women's Health. 2022;14:1709–1722。確認できたのは要旨のみです(Europe PMC 経由)。サウジアラビア・リヤドの18〜50歳の女性1,831人に聞き取った横断研究で、アラビアコーヒーを多く飲む人で、不安・気分の変化の症状(調整オッズ比2.44、95%信頼区間1.44〜4.12)、痛みの症状などとの関連が見られたとしています。 ↩1 ↩2
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Caan B ほか. Association between alcoholic and caffeinated beverages and premenstrual syndrome. Journal of Reproductive Medicine. 1993;38(8):630–636。確認できたのは要旨のみです(Europe PMC 経由)。年齢と人種をそろえたPMSのある女性102人とない女性102人を、生理後と生理前にそれぞれ3回の24時間の食事の聞き取りで比べ、「no significant difference was observed in total caffeine intake or in the individual caffeinated beverages consumed during either the post-menstrual or the premenstrual period」としています。 ↩
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Purdue-Smithe AC, Manson JE, Hankinson SE, Bertone-Johnson ER. A prospective study of caffeine and coffee intake and premenstrual syndrome. American Journal of Clinical Nutrition. 2016;104(2):499–507(全文で確認)。看護師健康調査II(1989年に25〜42歳だったアメリカの看護師116,678人の追跡研究)の中で行われた症例対照研究です。1991年にPMSがなかった人のうち、1993〜2005年に医療者からPMSと診断されたと報告し、その後の質問票で中等度以上の症状が確かめられた1,234人と、PMSのない2,426人を比べました。カフェインの量は1991・1995・1999・2003年の食事の質問票で調べています。年齢をそろえたモデルでは、カフェインやコーヒーが多い人でPMSのオッズが高かったものの、交絡要因を調整すると関連は見られず、最も強い交絡要因は喫煙だったとしています。カフェインの最も多い5分の1(中央値543mg/日)と最も少ない5分の1(中央値18mg/日)を比べたオッズ比は0.79(95%信頼区間0.61〜1.04)でした。ロシニョールらの研究については「largely have provided the supporting evidence for the current medical recommendations」(現在の医療の勧めを主に支えてきた)とし、結果の違いの理由の一部に、交絡が残っていた可能性と、症状のある人が飲む量を増やしたり減らしたりする「reverse causation」(逆の因果)の可能性を挙げています。限界として「we did not evaluate directly whether reducing caffeine or coffee intake could reduce the severity of prevalent PMS」とし、確かめるには「randomized controlled trials restricting caffeine intake in women experiencing PMS are needed」としています。 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7
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農林水産省「カフェインの過剰摂取について」(令和8年8月28日更新)。コーヒー浸出液は100mLあたり60mg(コーヒー粉末10g、熱湯150mL)。150mLで約90mgとし、543mgをその約6杯と換算したのは、同じ濃さを仮定した計算です(このシリーズの第2回と同じ条件)。注釈5の研究の参加者が実際に飲んだ杯数ではありません。 ↩
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Liu J, Wang Y, Wu L, Wang L, Fang H. Study on the influencing factors of primary dysmenorrhea in female college students: Systematic review and meta-analysis. Medicine. 2024;103(49):e40906(全文で確認)。女子大学生の生理痛(原発性月経困難症)に関わる要因を調べた23件の研究をまとめたメタ解析で、カフェインを多くとることについての結果は2件(イランの症例対照研究360人、サウジアラビアの横断研究336人)をまとめたオッズ比2.082(95%信頼区間1.379〜3.144)でした。著者らは、この要因を含む研究の数が少なく、結果は慎重に解釈する必要があるとしています。カフェインが血管を広げるアデノシンのはたらきを妨げ、血管が縮んで子宮への血の流れが減ることを「One possible explanation」(考えられる説明の一つ)として挙げています。 ↩1 ↩2
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Zhao J, Zhang D. Beverage consumption patterns and primary dysmenorrhea among women of reproductive age: a population-based study in Beijing, China. Frontiers in Nutrition. 2026;13:1797903(全文で確認)。2021年9〜11月に北京の地域の保健センター10か所で集めた1,247人の横断研究です。生理痛の程度は、痛みのない人(1,247人中88人、約7%)を基準にした分析で、コーヒーを飲まない人と比べると、週1〜6回分飲む人(オッズ比2.819、95%信頼区間1.419〜5.602)と1日2回分以上飲む人(同3.100、1.398〜6.811)で、中くらい以上の生理痛との関連が見られました。生理中にコーヒーを減らしたと答えた人も、変えていない人より中くらい以上の生理痛との関連が見られ(オッズ比2.197)、著者らは、痛みの強い人が症状を和らげようとして飲む量を減らす逆の因果と矛盾しない結果としています。限界として、横断研究のため時間の順序や因果関係を確かめられないことを挙げています。 ↩1 ↩2
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Wang L ほか. Associations between soft drinks intake and primary dysmenorrhea among Chinese undergraduate female students. Scientific Reports. 2024;14:21210(全文で確認)。2020年に中国の女子大学生1,809人を調べた横断研究です。コーヒーを飲むかどうかと生理痛の有無には、はっきりした関連がありませんでした(P = 0.568)。痛みが中くらい以上の人の中では、コーヒーを飲む人のほうが、飲まない人より重い痛みとの関連が小さく(オッズ比0.451、95%信頼区間0.228〜0.892)、著者らは横断研究のため因果関係は解釈できないとしています。コーヒーは「よく飲むか」と飲む回数で尋ねています。 ↩
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Naraoka Y, Hosokawa M, Minato-Inokawa S, Sato Y. Severity of Menstrual Pain Is Associated with Nutritional Intake and Lifestyle Habits. Healthcare. 2023;11(9):1289(全文で確認)。日本の20〜39歳の健康な女性321人の横断研究です。生理痛で寝込む・薬なしでは過ごせない人(101人)と、それより軽い人(220人)を比べ、コーヒーを飲む量(摂取エネルギー1,000kcalあたりのg)にはっきりした差はありませんでした(P = 0.809)。 ↩
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Office on Women's Health(アメリカ保健福祉省)「Premenstrual syndrome (PMS)」(2025年9月26日更新)。「Avoiding foods and drinks with caffeine, salt, and sugar in the two weeks before your period may lessen many PMS symptoms.」 ↩
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厚生労働省研究班監修 ヘルスケアラボ「月経前症候群(PMS)」(2024年4月25日更新)。「治療法は確立されていません。プラセボ(偽薬)の効果があるという報告もあり、ホルモン剤-黄体ホルモン・ピルなど、利尿剤、抗うつ剤(SSRI)、栄養療法-ビタミンB6・ビタミンE・カルシウム・マグネシウムなどのサプリメント・カフェインや糖分・塩分・アルコールの制限、適度な運動・認知行動療法など300種類以上の治療が試みられていますが、残念ながら明確な治療法は確立されていません」。 ↩
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NHS(イギリスの国民保健サービス)「PMS (premenstrual syndrome)」(2024年6月18日レビュー)。自分でできることとして運動・食事・睡眠・ストレスの軽減などを、避けることとして喫煙とお酒の飲みすぎを挙げていますが、カフェイン・コーヒーについての記載はありません(2026年10月1日確認)。 ↩