長く寝たはずなのに、休めた感じがしない
朝起きたとき、よく休めたと感じる日もあれば、寝たはずなのに疲れが残っている日もあります。寝床で過ごした時間は十分なのに、すっきりしない。そんなとき、「睡眠の質が悪いのかな」と思うことはないでしょうか。
睡眠の質を考えるときの手がかりは、朝に休めたと感じられるか、寝つきや途中の目覚めはどうだったか、ということです。厚生労働省の解説でも、良い睡眠には、必要な睡眠時間と、その眠りの質の両方が大切だとしています。1
「何時間寝たか」に、「どんなふうに眠り、どれくらい休めたか」を加えると、眠りを振り返る視点が増えます。まずは、自分で感じ取れる朝の感覚から見ていきましょう。
「睡眠休養感」は、眠って休めたという実感
朝、目が覚めたときに「眠って、十分に休めた」と感じること。この感覚を「睡眠休養感」といいます。難しく聞こえる名前ですが、眠りによって休養がとれたと自分で感じられるか、という意味です。1
たとえば、「昨夜は長く寝た」と「今朝はよく休めた感じがする」は、同じことを言っているようで、見ているものが違います。前者は時間の長さ、後者は目覚めたあとの実感です。睡眠休養感が表すのは、後者の方です。
眠っている間の様子は、自分ではすべてわかりません。そのため厚生労働省は、睡眠の質を考える目安として、この朝の実感を挙げています。日中に強い眠気があるか、夜中に何度も目が覚めるかどうかも、あわせて見る目安です。1
ただ、休めた感じがあれば短時間の睡眠で十分、ということではありません。睡眠時間を確保することも、質を保つことも、良い睡眠に欠かせないとされています。朝の感覚は、眠った時間とあわせて見るものです。1
寝床にいた時間と、眠った時間を分ける
ここで、睡眠時間の数え方も確かめておきましょう。寝床に入ってから起きるまでの時間には、寝つくのを待つ時間や、夜中に目が覚めていた時間も含まれます。実際に眠った時間とは、分けて考える必要があります。12
たとえば、3時間眠ったあとに10分目が覚め、その後また3時間眠ったとします。この場合、睡眠時間は合わせて6時間。途中で起きていた10分は数えません。1
厚生労働省の解説にある例です。帯の長さは時間の比に合わせています。望ましい睡眠時間や、目覚めてよい長さを示すものではありません(注釈1)。
睡眠中に目が覚めることを「中途覚醒」といいます。厚生労働省の解説によると、中途覚醒はほとんどの人にあり、すべてを自覚できるとは限りません。目が覚めたこと自体より、眠りがどの程度こま切れになったかが、質を考えるうえで関わります。1
また、よく休もうとして寝床で過ごす時間を延ばせば、それだけ眠りが良くなるわけでもありません。体に必要な睡眠時間を超えて長く寝床にいると、かえって睡眠の質や休養感が下がる可能性があると説明されています。1
眠りは、一晩中ずっと深いわけではない
「ぐっすり眠る」と聞くと、朝まで深く眠り続ける様子を思い浮かべるかもしれません。けれど、実際の眠りには、浅い段階も深い段階もあります。
睡眠には、レム睡眠とノンレム睡眠の二つの状態があります。ノンレム睡眠はさらに浅い段階と深い段階に分かれ、眠り始めは浅い段階を経て深い眠りへ進みます。深いノンレム睡眠は夜の前半に多く、レム睡眠は後半に多くなります。3
- 前半深いノンレム睡眠が多い
- 朝方に向けて浅いノンレム睡眠が増える
- 後半レム睡眠が多くなる
e-ヘルスネットとNHLBIの説明をもとにした模式図です。段階の長さや回数は実測ではなく、人や年齢によって違います。浅いノンレム睡眠はN1・N2をまとめ、深いノンレム睡眠はN3として描いています(注釈3)。
つまり、一晩の中で眠りの深さが変わるのは、睡眠のもともとの姿です。浅い眠りが含まれることと、睡眠の質が悪いことは、そのまま同じ意味にはなりません。
では、深さ以外に、一晩の眠りのどこを見ればよいのでしょう。次の手がかりになるのが、寝つくまでの時間や、途中で目が覚めていた時間です。
寝つきと、途中の目覚めも手がかりになる
アメリカの睡眠財団(National Sleep Foundation)が専門家と検討した目安には、寝つくまでにどれくらいかかったか、途中で何度目覚めたか、目覚めていた時間はどれくらいか、という項目があります。もう一つが、寝床にいた時間のうち、実際に眠っていた時間の割合です。42
これらは、眠りの深さとは違う側面を見ています。寝つくまでに長くかかった夜と、何度も目が覚めていた夜は、同じ長さを寝床で過ごしていても、眠り方が違います。その違いを捉えるための目安です。
眠りの続き方に関わる4つの項目
- 1寝つくまでの時間
- 2途中で目覚めた回数
- 3寝ついたあとに目覚めていた時間
- 4睡眠効率寝床にいた時間のうち、眠っていた時間の割合
アメリカの睡眠財団が開いた専門家の会議の合意(2017年)で、ほかに病気のない人について、4つの項目の多くで意見が一致したものです。研究では、目覚めた回数は5分を超える目覚めを数えています。番号は項目を区別するためのもので、順番や重みを示すものではありません(注釈4・2)。
専門家の検討では、こうした項目の多くについて、睡眠の質の目安になると意見が一致しました。ほかに病気のない人を対象にした目安であり、これだけで睡眠の問題の原因や病気の有無を判断するものではありません。4
眠った時間、朝の休めた感じ、寝つきや途中の目覚め。このように見ていくと、「よく眠れたか」を、時間だけでなく、自分の実感と夜の眠り方からも振り返れます。
厚生労働省は、眠っても疲れが取れない、日中にとても眠くなるといった状態が、生活習慣や睡眠環境を見直しても続き、日中の生活に影響しているときは、早めに医療機関を受診することをすすめています。1
眠った時間と、休めた実感。両方が、眠りを知る手がかり。
注釈・出典
厚生労働省 スマート・ライフ・プロジェクト「寝ても疲れが取れないなら要チェック!あなたの睡眠の質 大丈夫ですか?」。厚生労働省が令和6年2月に発表した「健康づくりのための睡眠ガイド2023」にもとづく解説で、国立精神・神経医療研究センターの栗山健一氏が監修しています。ページに日付の記載はありません。睡眠ガイド2023の本体はPDFのため、このHTMLの解説で確認しました。「良い睡眠のためには、睡眠時間を確保することと、睡眠の質を上げることの2つが重要です」「「時間」を確保しても「質」が低ければ良い睡眠とはいえませんし、「質」を上げるためには「時間」を確保することが必要なので、どちらが欠けても良い睡眠にはならないのです」「一般的に、睡眠時間がしっかりとれていて、途中で目覚めたりせずにぐっすり眠れている状態を「良い睡眠」といいます。睡眠時間はある程度自分で確認できても睡眠の質は自分では判断しにくいものですが、その目安となるのが、朝目覚めた時の「睡眠休養感」です。そのほか、昼間に強い眠気を感じたり、睡眠中に何度も目覚めたりするかどうかなども目安となります」「「睡眠休養感」とは、「睡眠で十分に休養がとれている」という感覚のことをいいます。「睡眠休養感」が低いと、高血圧や肥満や糖尿病などになりやすいだけでなく、うつ病の発症にもかかわるという調査結果もあります」。中途覚醒について「例えば、3時間寝てから10分中途覚醒があり、その後に3時間寝た場合、睡眠時間は6時間とカウントし、途中で目覚めていた時間はカウントしません」「中途覚醒した場合の睡眠の質については、睡眠時間がどの程度こま切れかによって異なってきます。中途覚醒がなく、ぐっすり眠るのがベストですが、中途覚醒は必ずしもすべて自覚できるとは限らず、現実的にはほとんどの人が中途覚醒しています」。寝床で過ごす時間(床上時間)について「体が必要とする睡眠時間以上に寝床で長い時間を過ごすと、かえって睡眠の質が悪くなり、睡眠休養感が低下する可能性があります」。受診について、眠れない、眠っても疲れが取れない、日中にとても眠くなるなどの症状には、生活習慣や寝室の睡眠環境などによる場合と、睡眠障害による場合があるとし、「見直しても症状が続き、日中の生活に影響しているときは、睡眠障害の可能性があるので、早めに医療機関を受診しましょう」としています。 ↩1 ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9
National Sleep Foundation「What Is Sleep Quality?」(2024年4月12日)。注釈4の会議を開いた財団による解説で、4つの項目を「Sleep Latency: how long it takes you to fall asleep」「Awakenings: the number of awakenings you have during the night」「Wake After Sleep Onset: the amount of time you are awake after first falling asleep」「Sleep Efficiency: the ratio of time asleep to time lying in bed」と説明しています。 ↩1 ↩2
厚生労働省 e-ヘルスネット「眠りのメカニズム」(三島和夫、2023年1月23日更新)と、米国国立心肺血液研究所(NHLBI)「Sleep Phases and Stages」(2022年3月24日更新)。いずれもHTML本文で確認。NHLBIは、ノンレム睡眠を覚醒から睡眠への移行段階(N1)、N2、深い睡眠(N3)の3段階に分け、深い睡眠は夜の前半に多く、レム睡眠は後半に多いと説明しています。e-ヘルスネットは、脳全体が一様に休むわけではないこと、朝方に向けて浅いノンレム睡眠が増えること、レム睡眠が後半ほど長くなることを説明しています。周期はe-ヘルスネットでは約90分、NHLBIでは80〜100分とされています。深いノンレム睡眠が睡眠前半に大脳を集中的に休ませるという説明はe-ヘルスネットによります。年齢とともに深い睡眠が減ることは両資料に記載されています。 ↩
Ohayon M, Wickwire EM, Hirshkowitz M, Albert SM, Avidan A, Daly FJ, Dauvilliers Y, Ferri R, Fung C, Gozal D, Hazen N, Krystal A, Lichstein K, Mallampalli M, Plazzi G, Rawding R, Scheer FA, Somers V, Vitiello MV. National Sleep Foundation's sleep quality recommendations: first report. Sleep Health. 2017;3(1):6–19。確認できたのは要旨のみです。睡眠の専門家と関係団体が指名した代表による会議(Sleep Quality Consensus Panel)が、系統的な文献の検索で選んだ277件の研究をもとに、3回の投票で合意を決めました。「For most of the sleep continuity variables (sleep latency, number of awakenings >5minutes, wake after sleep onset, and sleep efficiency), the panel members agreed that these measures were appropriate indicators of good sleep quality across the life-span. However, overall, there was less or no consensus regarding sleep architecture or nap-related variables as elements of good sleep quality」「There is consensus among experts regarding some indicators of sleep quality among otherwise healthy individuals」「Future research should explore how sleep architecture and naps relate to sleep quality」。資料中の sleep continuity は眠りの続き方、sleep architecture は睡眠の段階の構成を指します。 ↩1 ↩2