
美容室で聞いた、子宮頸がんワクチンの話
先日、初めて行った美容室で、美容師さんとお互いの子どもの話になりました。
私の子どもがまだ1歳だと話したら、「予防接種とか、たくさんあって大変ですよね」という流れになりました。
そこから美容師さんが、こんな話をしてくれました。
「僕も最近、長女の子宮頸がんの予防接種に付き添ってきました」
お子さんは中学生の女の子。
「女の子は大変ですよね〜」と言いながら、「任意ではあったんですけど、娘も『みんな打っているし』と言っていて。公費で無料だったこともあり、結構カジュアルに打ってきました」と話していました。
その言葉を聞いた時、私は少し嬉しくなりました。
子宮頸がんの予防接種の話が、美容室で、子どもの予防接種の延長線上で、こんなに自然に出てくること。
娘さんの世代の女の子たちにとって、「みんな打っているし」と言えるくらい、少し身近な選択肢になっていること。
それが、なんだかすごくいいなと思ったのです。
もちろん、そのご家庭にとっては、ひとつの予防接種として予定を入れただけなのかもしれません。
でも私には、その「カジュアルさ」が素敵に見えました。
私が高校生だった頃、子宮頸がんの予防接種は、もっと迷うものでした。
受けるか、受けないか。
受けたほうがいいのか、やめたほうがいいのか。
少し嫌な噂も耳に入ってきて、なんとなく怖くなった記憶があります。
周りを見ても、受けない人のほうが多かったこともあり、私も、「まあ別にいいかな」と思って、結局打つのをやめました。
当時の私は、本当に軽く考えていました。
子宮頸がんという言葉は知っていても、それが自分の未来とつながっている感覚はほとんどありませんでした。
そもそも子宮頸がんがどんな病気なのかもよくわかっていなかった気がします。
ワクチンを打たないという選択が、将来どんな気持ちにつながるのかも想像できていなかった。
もちろん、予防接種は任意です。
受けるかどうかは、それぞれが情報を見て、納得して決めることだと思います。
不安があることも、迷うことも、決しておかしなことではありません。
でも、15年後の私は子宮頸がんの軽度〜中等度異形成で、定期的に経過観察をしています。
今のところ症状はなく、経過観察で済んでいます。
日常生活が大きく変わったわけでもありません。
それでも、検査のたびに、少し緊張します。
もし進んでいたらどうしよう。
もし悪くなっていたらどうしよう。
この先もずっと、こうやって不安を抱えながら検査を受けていくのかな。
そんな気持ちが、毎回どこかにあります。
だから正直に言うと、私はあの時、ワクチンを打たなかったことを後悔しています。
もちろん、ワクチンを打っていれば絶対にこうならなかった、と言い切れるものではありません。
ワクチンだけですべてを防げるわけではないし、子宮頸がん検診が大切なことも変わりません。
それでも、あの時の私は、もう少しちゃんと知る機会があってほしかった。
怖い噂だけではなく、効果や限界、不安な時にどこへ相談すればいいのかまで、落ち着いて考えられる材料があってほしかった。
美容室での会話を聞いて、私が嬉しくなったのは、たぶんそこでした。
今の中学生たちが、子宮頸がんの予防接種を「特別に怖い話」ではなく、日常の延長線上にある選択肢として受け取っていること。
それは、私の頃より少し進んだ景色に見えました。
私の息子はまだ1歳なので、まだ対象ではないのですが、男の子のHPVワクチンについても、自治体から助成の案内が来ていた気がするな、と思い出しました。
調べてみると、男児・男性のHPVワクチンは、今の日本では全国一律の定期接種ではなく、基本的には任意接種です。
私の住んでいる自治体では費用助成があり、その案内が来ていました。(住んでいる地域によって制度が違うので、気になる場合は自治体の案内を確認するのがよさそうです。)
子宮頸がんの予防というと、どうしても「女の子の話」「女性の体の話」として語られがちです。
でも、子宮頸がんの原因になりうるHPVは、男性も感染するウイルスです。女性は自分の体を守るためにワクチンを打つ。男性も、自分の体を守るために、そして将来の相手を守るために打つ、という選択肢がある。
そのことは、男の子の親としてもちゃんと知っておきたいと思いました。
息子が対象年齢になった時には、私はできるだけきちんと説明したいです。なぜこのワクチンがあるのか。自分の体を守ることと、誰かの体を守ることがつながっているのだということ。
そのうえで、本人の選択は尊重したい。どんな選択をしてもいいという前提は持ちながら、それでも親としては、できれば前向きに接種を考えてほしいと思っています。
だからこそ、あの美容室での何気ない会話が、私は嬉しかったのだと思います。
「みんな打っているし、公費で無料だから、行ってきました」
その軽さに、救われる人もいる。
深刻に構えすぎず、でも大事なこととして、ちゃんと予定に入れる。
そんなふうに体のことを扱える空気が、少しずつ広がっているのかもしれない。
すぐに答えを出さなくてもいい。
迷うなら、迷ったまま調べてもいい。
不安なら、医師や自治体に聞いてみてもいい。
ただ、知らないままにしないこと。
自分の体のことも、誰かの体を守ることも、怖い話として遠ざけすぎないこと。
あの時の自分にも、今の誰かにも、そう言いたい気持ちがあります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

